親のくらし

【働く40代】親に介護が必要になる前に。言語聴覚士が雑談の方法を伝授。

ちかもあ

・親に介護が必要になる時がきたらどうしよう …

・まだまだ元気だけど、少しずつ老後が心配 …

・仕事や育児はどうしたらいい?

・心配はしているけど、特に準備はしていない

こんな思いを抱えている方も多いと思います。

介護が始まると

  • 時間の制限が生活を圧迫します。
  • 肉体的なしんどさや、精神的な負担が生まれます。

そして、介護は、いつまで続くか分からない。

この記事を書いた人

訪問言語聴覚士として10年勤務。

在宅で、ことばや飲み込みのリハビリや、家族への指導を行っている。

障がいを持つ方のコミュニケーションを取り扱う専門家。

筆者が、在宅で介護をしている家族の方からよく見聞きするのは、

「もっと聞いておけばよかった」

「もっと話しておけばよかった」

という後悔の声です。

認知症や失語症になると、

  • 話を理解できない
  • ことばで表現できない

など、うまくコミュニケーションがとれなくなるという事があります。

ちかもあ

介護、心配だけど、何からすればいいのか。

親が元気に過ごしている時にこそ、必要なもの

ちかもあ

それは「雑談」です !

雑談を繰り返すことで、親が子どもに重要な話をしやすくなる状態を作ることができます。

「なんだ、雑談か」と思うかもしれません。

でも、なかなか難しいんです。

この記事を読むことで、重要な介護の話をするきっかけとなる「雑談力」について、理解できます。

会話と雑談の違い

会話は2種類に分類することができます。

「連想型会話」と「目的指向会話」です。

連想型会話」では、直前の発話・話題からの連想から作られ、会話者同士の関係維持が重要になる。

目的指向型会話」とは、明確な目標を持つ会話であり、他者に対する要求や説得を目標とする会話他者から知識を得るための会話問題解決のための会話などが含まれる。(1990.仲)


会話 の種類 が会 話 の記 憶 に及 ぼ す影 響 
広 島大 学 仮 屋 園 昭 彦 ・伊 藤 克 浩 ・廣 瀬 等

この記事では、

  • 「連想型会話」=雑談
  • 「目的指向型会話」=会話

と呼ぶことにしています。

雑談

目的のない、他愛もないことを話ことです。

会話

明確な目標を持っているものです。

  ・相手に要求や説得をするため

  ・相手から知識を得るため

  ・問題解決のため  など

雑談とは

ちかもあ

目的のない、他愛もないことを話すことです

まとまりやテーマも必要ありません。

続かなくても良いです。

話を進めていく中で出てくる話題から、次々と次の話が生まれていきます。

話をするもの同士の関係性維持が必要です。

つまり、慣れ親しんだ、心を開いている相手とであれば、雑談は弾みます。

用事がある時の会話は雑談ではないと考えます。

雑談の目的

親との信頼関係を築くため

ちかもあ

親子なのだから、親の事は分かっているよ、

と思っていませんか?

小さい頃一緒に暮らしていましたが、社会人になってからや、結婚してからは親と離れて暮らす人が多いです。

40代は、親と一緒に暮らしていた期間よりも、離れて暮らしている期間の方が長くなっています。

40代になると、社会に出て、経験したことが蓄積されています。

自身の経験から、親に対して、自分の考えを一方的に話すことがあるでしょう。

親との価値観は大きく違ってきています

いくら親子だとはいえ、急に介護に関する事を話しても、うまく聞き出せることはありません

親子だからこそ、信頼関係が必要です。

親子が笑顔でストレスなく良い関係を作る。そのための雑談を意識してみましょう

介護の具体的な会話につなげるため

介護の会話は、雑談ではなく、「説得」や「要求」が目的になることがあります。

  • お金
  • 延命
  • 介護生活

など、直接親に聞きにくい話題があります。

いきなり話を始めるには抵抗があります

会話内容が、親と自分にとって負担になってしまいます。

介護について、親の希望や考えを聞く会話ができるようになるまでには、その前段階があります

それが「雑談」です。

雑談の決まり

・他愛もない話。とにかく何でもよい

・介護に関する核心の話題はいらない

・定期的に続ける

他愛もない話。とにかく何でもよい

用事もなく、親に連絡をすることは、容易ではないです。

仕事や家庭の事で忙しいこともあるでしょう。

しかし、親に介護が必要になった場合、今の生活に介護が入ってくることを自覚する必要があります

40代のこれからの人生に関わる大切な事として、頭に入れておきましょう。

とにかく、どんな話でも良いです。

雑談から展開する素敵な話も生まれるかもしれません。

介護に関する核心の話題はいらない

雑談は、目的を持たずするものです。

重要な介護の話はしないでよいです。

親には元気で暮らし続けて欲しいという気持ちで、雑談をしてみましょう。

定期的に続ける

ちかもあ

週に1回

親に連絡してみましょう!

方法は

  ①直接会って、顔を見ながら

  ②電話で声を聴きながら

  ③LINEやメールなど

とりやすい方法でよいので、継続してみてください!

親と関わる(接触する)回数を増やすことで、重要な事を話しやすくなるなど良い感情が生まれるでしょう。

筆者は、ほぼ毎日、実家に行って、親と会っています

生活スタイルの確認のために、行く時間帯も変えています

ラインも1週間に1回、やりとりしています。

本当に何気ない内容です。

写真の挿入などLINEの使い方を親と一緒に話しすることで、会話も広がります。

雑談してみよう

雑談テーマのポイント

・生活リズムを知る

・運動、活動量を知る

・趣味(普段よくしていること)を知る

・仲間や友人関係を知る

・近所付き合いを知る

食事を知る

・睡眠を知る

「まずは知る」という事です。

ちかもあ

親に聞いたことに、あれこれ言いません。

生活リズムを知る

何時に寝て、起きているのか…意外と知らないかもしれません。

家族構成にもよりますが、1人暮らしでは特に確認しておきたいところです。

食事を知る

1日何回なのか。

食事の内容はどんなものなのか。

睡眠を知る

夜間、尿意があり、トイレに行く回数が増えていることもあります。

トイレの後、中々寝つけない事もあります。

義母と同居をしている筆者でさえ、義母が夜間に2~3回トイレに行っている事には気づいていませんでした。

趣味を知る

親が好きで時間を費やしてしている事があれば、その話をしっかり聞いて下さい。

親の考えや興味など、新しいことが聞けるので、良い発見になります。

筆者は、訪問で言語療法を行う際に、一番大切にしている事が、「自由会話」です。

治療目的をもって話すのですが、そのテーマで多いのが、趣味や好きなことについてです。

今のものでなくても、昔の趣味なども、とてもおもしろい話が聞けます

運動・活動量を知る

じっとしていたり、寝る時間が増えていたりしませんか?

体を動かすということは、脳を活動させることでもあります。

子どもが関わりを増やすことで、活動量を上げるきっかけになります。

おすすめの雑談テーマ

ちかもあ

食生活の事を知ること!

食事は毎日必ずするので、話題にしやすいです。

食事内容について

・同じものばかり食べる

・食べる時間がバラバラ

・量が少ない

・栄養が不十分

・食べていない   など

これらについては、心配する部分ではありますが、親の習慣やこだわりが大きいこともあります。

子どもがよかれと思ってアドバイスや指摘をしても、改善するには大変です。

「そうなんやね」と聞き入れて、改善していけそうな事から少しづつアプローチしてみましょう。

食事を作るまで

・買い物は、誰が、どこに行っているか

・買い物に行くのが危なくないか(車の運転など)

・料理をつくることが面倒になっていないか

・食器を洗うと腰が痛いなど、作業のしにくさはないか

献立を考え、買い物に行き、調理し、後片付けをする。これらの行為は、大変脳に良い刺激になっています。

できる範囲で続けていけるよう、見守って、気にしておきましょう。

全てを手伝うのではなく、時々一緒にやってみるなどして、関係性を作っておきましょう

食事中のことについて

・食事にかかる時間はどれくらいか

・よく噛んでいるか

・柔らかいものが多いか

・飲み込みはしにくくないか  など

たまに、一緒に食事をしてみましょう

健康で、口から食べ続けられる。

この当たり前の幸せが、実は当たり前ではなく、貴重なことです。

食べる事で体が作られ、心が満たされます。

親が元気なうちに、食事に関する事を聞いておける機会を作ってみましょう

介護の会話

後悔している「聞いておけばよかった」こと

在宅で親を介護している方が、元気なうちに聞いておけばよかった、と後悔している事は、

①健康状態

②経済状況

③望む介護生活の確認

④延命治療について

健康状態

親の健康状態は、持病があり注意の必要なものから、軽い不調など程度が様々です。

持病についての知識や注意点を、親と一緒に考える機会を持つようにしましょう。

薬の有無や、服薬の頻度などは話題にしやすいです。

健康診断や採血の結果を見せてもらうなど、客観的な指標を確認することも大切です。

かかりつけ医の有無や、通院頻度を知っておくと、話題のきっかけになります。

急な入院や手術などの時、情報提供ができなかった。」

持病の特徴を知っておけばよかった

など、意識をしておけば対応できたことも多いです。

ちかもあ

筆者が、実母の健診に付き添って行った時の事

母は「MRI」という検査で、MRI装置の狭い空間に入り続ける事ができませんでした。

また、検査中の大きな音にも相当ストレスを感じたようで、結局MRI検査は受けられませんでした

一緒に行かなければ分からなかったと思います。

今後、入院し、検査が必要になった場合の対応など、スムーズに行えるように考えるきっかけになりました。

元気なうちにできる事を、家族で話してみてはいかがでしょうか。

経済状況

ざっくりでもよいので、介護にかかる費用を、シュミレーションしてみましょう

介護を続ける上で、お金は必要です。

適切なサービスの選択肢を広げるためにも「知っておけばよかった。」と後悔する声は多いです。

知っておけばよかった親の経済状況は、

  • 年金
  • 保険
  • 預貯金
  • 負債
  • 有価証券
  • 不動産・土地
ちかもあ

聞きづらい話題ですよね…

分かってはいるけれど、後回しになる話題です。

結局最後まで聞けない事もあります。

筆者は、年金預貯金土地の有無などの話は、少しずつ踏み込めている感触があります。

踏み込みやすそうな話から、思いがけず聞ける話もありました。

通帳や印鑑がどこにあるか、ネット証券も利用している、年金はいくらかなど。

介護費用の捻出は、基本的には、親の資産からまかないます

介護が必要になってから、具体的な費用が分かるので、介護が始まる前はイメージしにくいのが現状です。

地域包括支援センターは市町村にあり、介護が必要になる前でも、介護の専門家に相談することができます

親の経済状況を知る事は、介護を継続していく上で、大変重要です。

踏み込んですぐに聞ける話題ではありませんが、聞ける範囲で、根気強く関わってみましょう

望む介護生活の確認

家で介護を受けたいか

施設に入ろうと思っているのか

どちらを選択するにしても、判断が必要です。

家族、きょうだいで話をするべきことなのは分かってはいますが、進めにくい事です。

親の考えを聞けるような雑談を根気強く進めてみましょう

延命治療について

親の意思を尊重するためにも、極めて重要です。

差し迫った場面で、親の命の線引きを、子どもが担うことになりかねません

家族に相当な精神的負担をかけてしまいます。

子どもが答えを出すことは容易ではないです。

選択した結果が良かったのかは、結論が出ないままの事もあります。

介護が必要になる前に、話しにくいのが現状だと思います。

そのため「話しておけばよかった」と後悔される一番の問題です。

介護について確認する時のポイント

介護について、親に確認する時のポイントは、

  • 一気に聞かない
  • 子どもの意見を押し付けない
  • オープンクエスチョン・クローズドクエスチョンを使いわける

一気に聞かない

親に聞きたい内容を簡単にやり取りできるわけではありません。

親に聞きたい事の概要や具体的な事を、自分でも調べてみて、親と情報を交換するような関わりをするとよいです。

子どもが聞きたい内容を一気に聞くのではなく、

 ・聞きやすい内容

 ・話を進めやすい内容

細かく、根気強くやり取りできるようにしてみましょう

子どもの意見を押し付けない

親に介護が必要になった時に、まず初めに聞いておくことは「親のニーズ」です。

どんな介護が、どれくらい必要か、専門家と話を進めていくことになってきます。

この時、子どもの意見を押し付けることなく、専門家を交えて状況を整理していきましょう。

オープンクエスチョン・クローズドクエスチョンを使いわける

筆者が、言語療法の場面でよく取り入れるコミュニケーション方法です。

  • オープンクエスチョン

   相手が自由に答えられる質問の仕方

  • クローズドクエスチョン

   相手がyes/noで答えられる質問の仕方

オープンクエスチョン

〇具体例

「どういうことがあったから?」

「どんな時にいいと思う?」

「いつまでにやってみたい? 」など

〇メリット

 質問をきっかけに

  ・会話が広がっていく 

  ・想定外の事も聞ける 

  ・多くの事を聞ける

〇デメリット

  ・考える時間や言語力が必要 

  ・会話する相手によって、 信頼できる人でないと本音を話してくれない

  ・適当な答えになる

  ・答えにくいこともある

クローズドクエスチョン

〇具体例

「昨日病院へ行った?」

「こっちのサービスでいい?」

「買い物は行かなくていい?」 など

〇メリット

 ・答える事で、話題が終了する

 ・自分の意見を確定できるきっかけになる

 ・すぐに答えを伝えることができる

〇デメリット

 ・質問が続くと、機械的でストレスに感じる

 ・質問の仕方によっては、誘導されているように感じる

クローズドクエスチョンの注意点

「足の痛みは大丈夫?」「体調はよくなった?」などの質問は

「大丈夫よ」「よくなったよ」と、本当ではない事もあるので、注意!

ちかもあ

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの特徴を理解した上で、

2つの質問方法を使い分けながら、

親の希望や本音に少しでも近づけるようにしましょう!

注意点

親は本当の事を言わない

まだまだ元気な親は、少しの体調不良や、軽い持病のことは、子どもにはあえて伝えない事があります。

離れて暮らし、仕事や子育てに忙しい子どもに、心配をかけないでおこうという気持ちがあります。

筆者が、たまたま実家に行ったとき、母が「朝からめまいがして立てなくなった」とリビングで寝ていました

その日の午後に、病院に行き診察を受け、夕方には軽快していました。

もし筆者がこの時実家に行っていなければ、状態の変化には気づくことができす、母にめまいが頻発しやすい状態なのを知らないままでした

「些細な事」がポイントです。何か些細な親の変化に気づくには、年に1~2回会うだけでは分からないです。

親と雑談をする回数を増やし、「ちょっと子どもに相談してみようかな」と思ってもらえるような関係性を作っていきましょう。

介護が必要になる前の雑談まとめ

雑談をする目的は、親にいざ何かあった時に、些細な困りごとでも、子どもに連絡をしてもらう状態を作りやすくすることです。

話が進まない、どうしても話せない事のほうが多いはず。

だから行動を起こさないのではなく、

「何の話題が話づらいか」

「どの話を親が拒むか」

を知るために、雑談することが重要。

親と雑談する力を身に付けて、親の介護に備える機会を積極的に作ってみてください